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執筆者の写真odorusakana

揺れてるくらいでちょうどいい身体


からだにも、木目や折り目、織り目のような目、 「からだ目(め)」みたいなものがあるんじゃないかと思っている。

木目は木の断面に現れた模様のことを言い、織り目は織物の表面に現れた組織のことを言う。

模様というのは平面を思い浮かべるし、組織もなんとなく平面を思い起こさせる言い回しだけど、

そこから構造を読み解くことはできる。

例えば板を割ったり切ったりしてみると、木を扱う職人じゃなくても、

木目によって反りやすかったり、割れやすかったり、しなりやすかったりと、

板の強度や特性が違ってくることがなんとなくわかる。

織り目も、縫い目も、結び目もそうだけど、

糸状のもので作る組織の違いによって強度が変わることを糸やロープを扱う人は知っている。

折り紙だってそう。

同じ紙なのに、折り方によって形も違えば構造が違うから強度も違う。

炭素原子の塊でも、並び方によって全然性質が違う。

ダイヤモンドと黒鉛は見た目も性質もかなり違うけど、成分は純粋な炭素Cで、

その違いは並び方、つまり結晶構造が違うだけ。

そんな感じで人のからだにも構造というものがあって、

その構造には力の伝わりやすい方向とか動きやすい方向といった特性がある気がする。

特性は、一つの関節がどの方向に何度まで動くかという限界値の話ではなく、

だいたいどの方向にどう動きやすいか、

どうからだのパーツを連動させれば限界に近い負荷を避けられるか、という話。

個々のパーツの特性よりも、全体の流れの話。

どういう系統で力が伝わるとなんかいい感じになるのかを探す作業だ。

これを考えるのに骨とか筋肉が連動して動いてるのをそのまま取り出して触れないから、

代わりに硬い棒と伸び縮みが可能なものが組み合わさってできた構造を触って

それがどういう動き方をするか、どうやったら動かしたい方向に動かせるか、

といった運動原理みたいなものを観察してみるのは無意味ではない気がしている。

実際、かれこれ二年間テンセグリティを触りながら身体を観察してみて、

次のことに気がついた。

①どこか(の筋肉)がactiveになるとそれにつられてつながっている周り(の骨)が動く

②そのときに、からだが緩んでいるのと固まっているのとで力の伝わり方が違う。

③なるべく全体を使ったほうが一箇所にかかる負荷は少ない。

これをを自分を中心に考えると、

①ある部分を動かそうとすると周り(の骨や筋肉)が勝手に連動する。

②ゆるめているとからだはムチのようにしなるし、固めているとからだは一つの塊のように動く。

③なるべく遠くから動かすと全身を使えてどこか一箇所が疲れ果てるのを防げる。

②をもう少し言い換えてみる。

「緩めていると衝撃を吸収しつつ発散する免震構造だが、固めていると限界まで耐える耐震構造だ。」

こう書くと、固めてても良さそうだし、たぶんそれでもいい。

だけど、動物の構造って止まるためではなく動くために出来ていると僕は考えているし、

ダンサーとして動くことを考えるときに耐震構造より免震構造の方が面白そうだ。

それに、動かしたいところの周りが緩んでいると最小限の力で動かせるし、

遠くから動かすと身体のパーツの重さも加わって、ムチのように末端で大きな力が使える。

なので、僕が探っている身体の扱い方はたぶん次のようになる。(ただし、2018年2月10日現在)

———————————————————————————

①動かしたいところではないところをactivateする。

②そのときに、動かしたいところの周りは緩めておく。

③なるべく遠くから動かす。

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こんな感じであれこれ身体を動かしていると、

力の流れやすい方向/伝わりやすい方向(=「からだ目」)があるのがなんとなく分かって来る。

だけど、それは解剖しても目に見えないし、数え上げられるものじゃない。

その時その状況によって違ってくるから、無限にある。

なんだけど、数える必要がそもそもなくて、

地面を押している部分(末端)と動かしたい部分(これまた末端)を意識して、

あとはその間を調整して力を伝わりやすくすればだいたいうまくいく気がしている。

固めすぎず、緩めすぎず、常にすこし揺れ動いている状態。

もしかしたら、人の身体は揺れているくらいでちょうどいいのかもしれない。


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